早野忠昭 × 髙橋みどり
早野忠昭

早野忠昭(はやの ただあき)

1958年生まれ。長崎県出身。一般財団法人東京マラソン財団事業担当局長・東京マラソンレースディレクター、日本陸上競技連盟総務企画委員、国際陸上競技連盟ロードランニングコミッション委員、スポーツ庁スポーツ審議会健康スポーツ部会委員、内閣府保険医療政策市民会議委員。1976年インターハイ男子800m全国高校チャンピオン。筑波大学体育専門学群卒業後、高校教論、アシックスボウルダーマネージャー、ニシ・スポーツ常務取締役を歴任。

髙橋みどり

髙橋みどり(たかはし みどり)

テレビ朝日の情報番組でファッションレポーターとして活躍後、ジュン アシダ、メルローズの企画部販売促進を担当。1990年にはバーニーズ ニューヨークの日本進出にともない宣伝部ジェネラルマネージャーに就任。ジョルジオ アルマーニ ジャパン広報室長を経て2000年にエストネーションを設立。エグゼクティブオフィサーとして広告宣伝、PR、マーケティングの統括を担う。2005年6月に独立して株式会社Oensを設立後は代表兼、イメージングディレクターとしてPR、マーケティング、商品や店舗プロデュースに携わりつつ、原稿執筆、セミナー講師、テレビ出演などでも活躍。

ファッションもランニングも
人を幸せにする?

大会前後、練習前後も楽しむストーリー

髙橋 ■
私、じつはランニングを習っていたことがあるんです。
早野 ■
そうなんですか?
髙橋 ■
ちょうど10年前にランニングが流行り始めた時期で、私の周りでも走り出す人が多くて。でも、皆は好き勝手に走っているから膝が痛い、腰が痛いと言う人が多く、せっかく走り出したのにケガをするのもつまらないなと思って、私は最初からパーソナルコーチについて習ったんです。そのおかげでケガなく続けられて、今ではコーチなしで走れます。そして、大島の駅伝大会にも1回仲間皆で出場しました。
早野 ■
前日から飲んで食べて、盛り上がりましたか?
髙橋 ■
そう、お酒が足りなくなって(笑)。楽しい思い出ですね。
早野 ■
僕らが今まさに提唱しているのがそれです。堅苦しさがなくて、仲間でワイワイと大会の前後、練習の前後も楽しむスタイル。かつて僕が高校の体育の教師をやっていた頃は、走ることに限って言えば脚が速い人は5、遅い人は2と点数をつけていたのですが、現在、東京マラソンに出たり日常的にランニングをしている大多数は、通知表で5をもらっていなかった人たち。それほど門扉が広くなり、さまざまなスタイルで楽しむ人が増えているんです。
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ランニングの気軽さ、自由さがいい

髙橋 ■
ランニングは、とても気楽なスポーツだと思います。スポーツクラブだと何時から始まるレッスンに合わせて行かなければいけませんが、ランニングは自分が走りたいと思った時にランニングシューズを履けばできます。すべて自分で決められる自由さがすごくいいなって思います。
早野 ■
目的や取り組むスタイルも自由です。シリアスランナーはタイムや順位を追いかけますが、それだけの世界じゃないんです。歩いてしか皇居を1周できなかった人が「1周走れました!」と言ったときの目は本当に輝いています。それで自信が出てきて、どこどこの大会に出ますと目標もステップアップして、記録をどんどん伸ばしていこうと頑張るわけです。レベルは違うけれど、目標を持ってやり遂げて得る達成感や満足感は誰もが味わえるものなのです。それは嫌々やってきた体育の授業では得られなかった体験で、“頑張った自分を褒めたい気持ち”は誰もが根源的に持っているナルシシズムなんだと思います。
髙橋 ■
それに音楽を聴いたり、景色を見ながら走っている時って、すべてのことを忘れられますよね。無になれる時間で、同じ場所を歩いたり車で運転している時とはぜんぜん違うものが見えてくるので、頭の中が一旦真っ白になって整理されるんですよ。クラブでも部活でもないので、苦しければ歩けばいいし、やめてもいい。喉が乾いたら水を買えばいい。すごく自由に取り組めるスポーツだと思います。

自分が着たい服をずっと着たかった

髙橋 ■
私が走り出したのは、50歳を前にした48歳の時に自分の身体を見直そうと思ったことがきっかけでした。50歳になっても自分が着たい服をイメージ通りに着ていたかったので、初めてスポーツを自分の生活の中に取り入れたんです。ランニングもそうですし、ジムへも行き始めました。そんなライフスタイルをもう14年続けてきましたが、そのおかげで好きな服も着られるし、皆には歩くのが速すぎるよと怒られるくらい今も元気です。
早野 ■
失礼ながら、10歳ほど年齢を読み違えていました(笑)。
髙橋 ■
あの時に怠けていたら、健康も自分の生き方も立ち止まっていたような気がします。一歩踏み出して本当に良かったなと思います。
早野 ■
それに気づけたことで、その後の人生が違ってきますよね。
髙橋 ■
はい。それにランニングが流行り、そこからトライアスロンに挑戦する人まで増えているのは、多くの人が“気がついた”からでしょう。私はいつも「ファッションは人を幸せにする」と言っています。良いもの好きなものを着ると人間は幸せだと感じるんです。高価な服が良いものというわけではなく、私は丁寧に作られたもの、デザイナーの思いが込められたものが良いものだと考えています。袖を通した時にホッとしたり、自信をもらえたり。単に着飾るためのものではなく、各々のアイテムにはそうした背景があって、それを含めて私たちは選ばせてもらっています。そういう意味でも、良いものを自分らしく素敵に着るには中身が大切なんです。頭や心はもちろん、身体もきちんとしていなければ、良いものを着こなせません。この何年かでそう考える人が増えてきたように思います。
早野 ■
胸にグサッとささる言葉ですね。